今回「井のいち」初参加の塩津丈洋さん。植物の治療・保全を主とした塩津丈洋植物研究所を設立。現在 東京都東久留米市に拠点を構えて精力的に活動を続ける塩津さんに、ご自身の活動のこと事などを伺いました。
今の中心的な活動と、それを始めたきっかけを教えてください。
現在 日本には2万軒を超える花屋さんが立ち並び、気軽に植物を購入することができるようになりました。
しかしその一方、安価で気軽になったことにより命ある植物達がまるで 使い捨ての道具のような扱いをされているように感じる時が多々あります。
壊れたから 新しい物を… 枯れたから 新しいものを…
どんなに 小さな植物達でも しっかりと一所懸命生きているのに。
これほどまで 身近で気軽に植物を購入することが出来るようになった現在だからこそその植物達を診てあげることができる機関(植物の病院)が必要だと。
人間・猫・犬・鳥、皆 調子が悪くなった時に助けてくれる病院があるのに、何故植物にはないのだろうか…。
植物の命に対する人間の意識の低さ。動かず・話さず自然にそこに佇む植物達他の生物に比べ命の重みを軽視されているのでは…
これらの 疑問の答えとして2010年、改めて植物の存在価値を見つめ直すため植物の治療・保全を主とした塩津丈洋植物研究所を設立。ベランダの小さなお花から 庭の大きな樹木まで植物の検診に駆け回る毎日を送っています。
また、一人でも多くの人に植物の魅力を伝えるために植物がちょっと好きになる、ワークショップ、盆栽、苔玉、寄せ植え等の活動を会社・学校・cafe・gallery・山 等 の場所で行っています。
まずは皆さんが気軽に植物に触れ 直接五感でその魅力を感じることがもっとも自然に植物の大切さに気付き 更には 地球規模での環境活動に繋がっていくと信じているからです。
和歌山県ご出身とのことですが、今東京を拠点にしている理由は。
海に山 私が生まれた和歌山県新宮市は緑に溢れ、とても自然豊かな所です。
夏は蛍が飛び回り、冬は霜柱が大地を覆っていました。
道には街頭も少なく24時間営業のコンビニが出来たのは高校生の時。
しんと静まり返った真っ暗な夜は、いつも星が綺麗に輝いていたのを覚えています。
すぐ近くには当たり前に植物達がいてくれました。
東京で最近こんな言葉を耳にしました。
「 植え替えをしたいんだけど 古い土を捨てる所がないのよね 」
地面はアスファルトで固められ、元々流れていた小川は地下を流れている現状。
特に東京の住宅事情では庭を持つことも難しく、ほとんどの方がベランダで植物を育てることを余儀なくされています。
他県に比べ 植物に身近に触れる環境が少ない東京だからこそ、この地で盆栽を通して植物の魅力を伝えていきたいと思っております。
上手な植物とのつきあい方はありますか。
植物との付き合い方は人間関係によく似ています。
身近に接してあげればあげるほど仲良くなることが出来ますし、気をかけず忘れてしまうとあっという間にそっぽを向かれてしまいます。
具体的に説明すれば、水あげ・陽当たり・風通しの環境づくりをしっかりと整えてあげられる方が上手に植物とつきあえる人にはなるのですが、今までの経験から 一言で言うと優しい人(愛情)が仲良く植物と一緒に暮らしているような気がします。
塩津さんにヒメトクサの手入れ方法を教えてもらってからぐんと愛着が増した気がします。
まずは知ること、これがとても大切だと思っています。
本当の植物の手入れ方法を知ると植物との距離も縮まりますし、今まで以上に愛着が湧きますよね。
私もそうですが、ヒメトクサも今とても喜んでいると思います。
気持ちは伝わりますからね。
植物研究所(植物の病院)の今後の展開は。
まだまだ 「植物の病院」の認知が足りませんので少しでも多くの方に理解されますよう
知識・技術を磨き少しずつ伝えていくことができれば幸いです。
「植物が調子が悪くなったから 病院に連れて行きましょう」
こんな言葉が自然に溢れている世の中になれば素敵だなと思います。
植物の里親制度があると聞きましたが。
海外に引っ越すことになり、植物を持って行けない。
祖父が亡くなり、植物を育てることができる人が誰もいない。
住宅事情家庭環境の変化等さまざまな事情で、育てることができなくなってしまった植物をお引き取りし、
自らの家庭に迎え入れてくれる方(里親)へ引き渡す活動を行っております。
いかなる理由であっても小さな命を最後まで育ててあげることが私たち人間の責任だと、私は考えております。
植物のお引き取り、里親を希望される方はご連絡ください。
今年の「井のいち」はワークショップも行いますが、どういった内容になりますでしょうか。
子供から大人まで 多くの方に植物に触れていただけるワークショップを考えております。
美しい新緑・かわいいお花 季節の植物達が皆さんをお待ちしております。
井のいち 来場者の方にひとことお願いします。
盆栽というと 少し堅く考えてしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、
まるでお茶を飲むように 特別なことではなく、
身近でより自然に植物と触れ、楽しんでいただければ 嬉しいです。